宅内で水漏れが発生した時、被害を最小限に食い止めるための最後の砦、それが屋外にある家全体の「止水栓(元栓)」です。しかし、いざ閉めようとハンドルに手をかけた瞬間、ビクともしない。焦れば焦るほど力が入りますが、この「固くて回らない」状況で力任せに操作するのは非常に危険です。まずは落ち着いて、なぜ固くなるのか、そしてどう対処すべきかを理解しましょう。 止水栓が固くなる最大の原因は、長年動かしていないことにあります。屋外の地面やメーターボックス内に設置されているため、雨風にさらされ、ハンドルやネジ部分が錆びてしまうのは自然なことです。また、水道水に含まれるミネラル分が、バルブの内部で固着してしまうこともあります。これらの要因が複合的に絡み合い、いざという時に「開かずのバルブ」と化してしまうのです。 もし固くて回らない場合に、自分で試せる対処法はいくつかあります。まずは、ハンドル周りの土やゴミを取り除き、動きを妨げるものがないか確認します。次に、潤滑スプレー(サビ取りスプレー)をハンドルの軸やネジ部分に吹き付け、数分間浸透させます。その後、タオルなどを巻いて力を入れやすくし、一気に回すのではなく、左右に少しずつ揺するように、ゆっくりと力を加えてみてください。これで少しでも動くようであれば、固着が解消される可能性があります。 しかし、絶対にやってはいけないのが、パイプレンチなどの大きな工具を使って無理やり回すことです。固着した状態で無理な力を加えると、バルブ本体や接続部分の配管を破損させてしまい、水漏れを止めるどころか、水が噴き出す大惨事を引き起こしかねません。また、動いたとしても、劣化したパッキンが破損し、止水栓そのものから水が漏れ出すこともあります。 少し試しても全く動く気配がない場合や、「メキッ」というような嫌な音がした場合は、すぐに作業を中止し、専門の水道業者に連絡するのが最も賢明な判断です。プロは専用の工具と技術で、配管にダメージを与えずに安全に操作してくれます。 いざという時に備え、半年に一度程度、止水栓を少しだけ開閉して固着を防ぐというメンテナンスも有効です。家のライフラインの重要なバルブ。日頃からその場所と状態に関心を持っておくことが大切です。