トイレの水を流した時、いつもより流れが悪い、水位がゆっくりとしか下がらない、といった現象は、多くの人が経験する水回りトラブルの初期症状です。この「なんとなく流れが悪い」というサインを放置すると、やがて完全に詰まって水が溢れるという大惨事につながる可能性があります。そうなる前に、まずは落ち着いて、なぜ排水が悪くなっているのか、その原因を探ってみましょう。 トイレの排水不良の主な原因は、大きく分けて四つ考えられます。一つ目は、トイレットペーパーの使いすぎです。一度に大量のペーパーを流すと、水に溶けきる前に排水管のカーブ部分で詰まってしまうことがあります。特に、節水型トイレは流す水の量が少ないため、この傾向が顕著になります。二つ目は、水に溶けない異物を誤って流してしまったケースです。スマートフォンやおむつ、生理用品、子供のおもちゃなどは、詰まりの最も厄介な原因となります。 三つ目は、排水管の内部に長年かけて蓄積された尿石や汚れです。これらが管の内壁にこびりつき、水の通り道を徐々に狭くしていくことで、排水能力が低下します。そして四つ目の意外な原因が、トイレタンク内の水量不足です。何らかの原因でタンクに十分な水が溜まっていないと、汚物を流しきるための十分な勢いが得られず、流れが悪く感じられるのです。 もし排水の悪さに気づいたら、まずはトイレタンクの蓋を開け、内部の水位を確認してみてください。タンク内には標準の水位を示す線が印されていることが多いです。この線よりも水位が著しく低い場合は、タンク内の部品に問題があるかもしれません。また、軽度の詰まりが疑われる場合は、バケツ一杯のぬるま湯(五十度程度)を少し高い位置から流し込むことで、詰まりが解消されることもあります。ただし、熱湯は便器や配管を傷める危険があるため、絶対に使用しないでください。 これらのセルフチェックで改善が見られない場合は、排水管の奥深くで問題が起きている可能性があります。無理に自分で解決しようとせず、速やかに専門の水道業者に相談するのが最も安全で確実な方法です。