「シャワーのお湯が出ない」という訴えの中には、完全に水しか出ない状態だけでなく、設定温度に達しない、あるいは温度が不安定であるという不満も多く含まれます。このような症状の背後には、給湯器本体の老朽化だけでなく、蛇口の構造上の問題が隠れていることが少なくありません。浴室の蛇口に多く採用されているサーモスタット混合栓は、内部にある「温調カートリッジ」という部品がお湯と水の量を自動で調節し、設定通りの温度を保っています。しかし、このカートリッジに長年の使用による水垢やサビが付着すると、お湯側の弁が十分に開かなくなり、結果として「お湯が出ない」という症状を引き起こします。もし、台所の蛇口からは熱いお湯が出るのにシャワーだけがぬるいのであれば、原因は給湯器ではなく、この混合栓の内部故障にあると断定して間違いありません。また、意外な盲点となるのが「ストレーナー」と呼ばれるフィルターの詰まりです。給湯器や蛇口の接続部には、配管からの異物混入を防ぐための網が設置されています。ここにゴミが溜まると水の勢いが弱まり、給湯器が着火するために必要な最低限の水流量を確保できなくなります。特に、近隣で水道工事があった後などは、一時的に配管内の錆が流れ込みやすく、突然お湯が出なくなる原因となります。これを解消するには、止水栓を閉めた上でフィルターを取り外し、古歯ブラシなどで清掃するだけで十分です。多くの人はお湯が出ないと「給湯器の買い替え」という高額な選択肢を思い浮かべますが、実際には数千円の部品交換や、無料の清掃作業だけで解決することも多いのです。日頃から水圧の変化や温度の揺らぎに敏感になり、小さな違和感のうちに適切なメンテナンスを行うことが、シャワーという日常の快適さを維持するための最も効率的な方法です。お湯が出ないという現象は、これらの装置が正常に機能し、事故を未然に防いだ結果であることも多いのです。したがって、お湯が出ないという事実を単なる「故障」と切り捨てるのではなく、機械が発している「どこかに不調がある」というメッセージとして受け取り、適切に専門家の診断を仰ぐことが、長期的には安全で経済的な維持管理に繋がります。
給湯器の点検で見落とされがちな温度調節の不具合