家の水道設備には、水の流れを止めたり調整したりするための「止水栓」が複数存在します。これらを正しく理解し、状況に応じて使い分けることが、水回りのトラブルに賢く対処する鍵となります。特に重要なのが、家全体の水を管理する「屋外止水栓(元栓)」と、各水回り設備を個別に管理する「宅内止水栓」の違いです。 まず、「屋外止水栓」は、その名の通り、家の外に設置されている大元のバルブです。戸建てなら敷地内の地面にあるメーターボックスの中、マンションなら玄関横のパイプスペースの中にあり、これを閉めると、家全体の水の供給が完全にストップします。その役割は、家全体に影響するような大規模な水漏れが発生した際の緊急停止や、長期不在時の漏水防止、あるいは家全体の水道工事を行う際の元栓として機能することです。まさに、家の水道システムの「マスターキー」と言える存在です。 一方、「宅内止水栓」は、キッチン、洗面所、トイレ、浴室など、それぞれの水回り設備の近くに設置されている個別のバルブです。例えば、キッチンのシンク下や、洗面台の下の収納スペース、トイレのタンク横の壁などに見られる小さなハンドルやマイナスドライバーで回すタイプのネジがこれにあたります。この止水栓は、その場所の設備だけの水の流れをコントロールします。 この二つの止水栓の使い分けは非常に重要です。例えば、キッチンの蛇口から水漏れしている場合に、屋外の元栓を閉めてしまうと、家全体の水が使えなくなり、トイレや入浴もできなくなってしまいます。しかし、キッチンのシンク下にある宅内止水栓だけを閉めれば、他の水回りは普段通りに使いながら、水漏れしているキッチンだけの修理や部品交換を安全に行うことができます。 つまり、トラブルが起きている場所が特定できている場合は、まずその場所の「宅内止水栓」を閉めるのが基本です。そして、どこから漏れているかわからない、あるいは複数の場所から漏れているといった緊急時や、家全体の工事が必要な場合にのみ、「屋外止水栓」を操作する、という使い分けが正解です。この二つの止水栓の役割を理解し、場所を把握しておくことが、水回りトラブルへの冷静な初動対応に繋がります。
屋外止水栓と宅内止水栓の違いと使い分け