節水トイレを使用している家庭で最も注意すべきは、良かれと思って行っている節約術が、実は設備を破壊する行為になっている可能性です。代表的なのが、タンクの中にペットボトルを入れてカサ増しをし、一度に流れる水量をさらに減らそうとする手法です。これは最新の節水トイレにおいては絶対に行ってはいけない禁忌です。メーカーが設計した水量は、汚物を搬送するために必要な最低ラインであり、そこからさらに水を減らすと、たとえ便器の中が綺麗に見えても、排水管の途中で汚物が確実に停滞します。これが繰り返されると、尿石と紙の繊維が混ざり合った強固なデポジットが管の内側に形成され、プロの業者でも除去が困難な詰まりへと発展します。また、節水を意識しすぎるあまり、一度の洗浄で済むところを無理に小ボタンで二回に分けて流すという方もいますが、これもあまり意味がありません。小ボタンの二回連続使用は、大ボタン一回分の水流の勢いには及ばず、重い固形物を押し出すための運動エネルギーが不足しているからです。正しいメンテナンスとは、水をケチることではなく、適切なタイミングで適切な水量を使い、システム全体を清浄に保つことです。月に一度はバケツで一気に水を流すフラッシングを行い、排水管に溜まった澱みをリセットすることを推奨します。また、酸性やアルカリ性の強い洗剤の多用も、便器の防汚コーティングを剥がし、かえって汚れや紙が付きやすくなる原因を作ります。中性洗剤を基本とし、優しくこすり洗いをするのが、節水トイレの性能を長持ちさせる秘訣です。私たちが目指すべきは、目先の数十円の水道代を削ることではなく、十年二十年とトラブルなく使い続けられる持続可能な運用です。節水という素晴らしい機能を正しく享受するためには、それを守るためのコストとしての水量を惜しまないという、一見矛盾するような姿勢が求められるのです。節水トイレという高度な技術を使いこなすためには、利用者の側もその特性を理解し、水量を適切にコントロールする知恵を持つことが、快適な生活を維持するための鍵となります。